私のお手伝いロボット観と作業用オートモ

私の「お手伝いロボット観」を表現するために開発したのが「作業用オートモ」でした。

  • システム(またはソフト)の話

与えられた課題が「ネットワーク経由でカメラを見ながらロボット操作をする」という今まだにない新しいもので、ハードはもちろん、ソフトの比重が高いものです。得意?のソフト開発を活用してできるだけ高効率・低コストでシステムを構築することを重視しました。
仕事では、マイコンファームウェアのドライバ開発からサーバーに近いネットワーク系のPCアプリケーションソフト開発までを幅広くデザインすることが多いので、システム開発にはその経験や蓄積が活きたと思います。
また、遠隔操作ということでマスタースレーブも考えてはみた(元々大学で似たような研究をしていたので)のですが「ベッドで寝たきりの人がロボットを操作するのだったら、作業負荷の高いマスタースレーブよりも、老若男女問わず操作しやすいと人気のプレイステーションゲームコントローラだけですべての操作ができるようにする」ことにしました。健常者がマスタースレーブでカッコよく操作するのは「私のお手伝いロボット観」と違うかな。これは病院で勤務している家族や、入院中の知り合いと話をする機会が多いのでそう思ったのでしょう。

  • ハードの話

作業用オートモは、上記のシステムで動作させるための”必要最低限”のハードウェアとして用意しました。みなさんが「実質的なお役立ち」のため5kg以上の超大型機で参加すると予想していましたが、超大型機を実現するには、強力サーボをたくさん使う必要があり「コスト高=高付加価値」を必ず求められます。研究開発でなくものづくりの設計開発部門に身をおくものとしては、当然「値段」も気になりました。ロボットがほしいというすべての人が富裕層とは限りません。そのためできるだけ少ないサーボ数でつくることを目指しました。もちろん、私がハード設計が苦手なんでほぼ既存部品を流用したという点も否定はしません(^^;)。
そこで描いたのが上段のラフスケッチになります。
「作業用オートモ」という名前は、機動戦士ガンダムシリーズで登場する「作業用ザク」から勝手にいただきました。作業用ザクは、戦闘用である旧ザク、ザクⅡからパーツを流用し現場ででっち上げた型式も無い「働くロボット」です。「他の機体のために、武器を取り外されたザク」というのも「平和的・非暴力的なイメージ」でよかったです。
さらに「作業用」から連想される「はたらくクルマ」をコンセプトとしました。
つまり「移動時は移動専用形態、作業時は現場の地面にアンカーを打ち付けて固定してクレーン(ロボットアーム)部分を延ばして高所作業を行う」のです。
作業用オートモも、移動時は腰のロボットアームを縮めて低重心で二足歩行ロボットとして移動し、作業場所(30cmの高さの机)をグリップして機体を合体・安定化すると腰のロボットアームを伸ばして作業を行うように考えました。
胸部にはカメラも付いているので、腰のロボットアーム機構により、「映画の撮影用クレーン車のようにカメラの視線・視点変更が自由自在」な撮影用オートモでもありました。胸の前で対象物を挟むので「ロボットハンドにカメラがついている」的な効果も狙ってみました。おかげで位置決めはしやすかった。

  • 最後に

「お手伝い(働く)」というひとつのキーワードが、いろんな発想に拡がったのはたのしかったです。
開発作業自体は「苦行」でしたが、考えて試すという開発のプロセスは「脳トレーニング」のようであり、当初の目標だった「開発プロセスを楽しむ」はできました。また、会場でのまわりからの反応も予想以上によくツクモ賞もいただいてホッとしました。打ち上げのお酒が美味しかったです!!(この一杯のために苦行してる by ブッダ
反省としては、ソフトの開発に注力しすぎて、ハードウェア検証が進んでいなかったことです。
今回、ロボットアーム部がトルク負けして2軸駆動で平行移動するはずがデュアル化した1軸しかうまく動かせずに、卵つかみの奥行き方向の位置決めがうまくいかなかったのが検証不足の最たるものです。本戦ではいろいろ強化して4kg越するかもしれませんね。

予選通過により、川崎市地下街アゼリアでも実証実験チックなことに参加できることになりました。ヨカッタ、ヨカッタ。

本戦では新機軸も用意したいのですが、あと3週間で盛り込めるかどうか。

今日は有休をとって東京にいてせっかくなので、ロボットからはちょっと離れて美術館にでも行こうと思います。

  • 最後の最後に

会場に来てくれたKさん、開発を手伝ってくれた九州ロボット練習会のメンバにも感謝。
運転してくれた君たちにも感謝!!