作業用オートモ 解説(その1)

ONOの電脳壁新聞で思いがけず1位をいただきました。ありがとうございました。レポートは散財心理学実習講義200Xで。
今回の「お手伝いロボットプロジェクト」は、私にとっては大きな「チャレンジ」でした。
昔から「ロボットは、アクチュエータ、機構、電気、ソフトの多様な技術の集合体」と言われますが、今回の競技ではさらに「外部コンピュータとの連携システム」、そして「二足歩行ロボットゆえの人との協調性・環境との親和性」が求められ、本来はかなりの開発リソースが必要になります。今回は「チーム九州」としての参加でしたが設計開発のほとんどを一人で行っていて「今の自分の開発力でどこまでできるか」という挑戦でした。
優勝した「アリモプレナ」の完成度をみて、スミイさんの開発力には驚愕させられました。スーパーエンジニア、群を抜く完成度です。
今回、わたしが一番悩んだのはやはりハードウェアです。いままで、ROBO-ONE機体をウオッチングしてきたことで近藤科学のサーボでいうと、4013なら3kg、4014なら4kgの機体がつくれることはわかっていました。お手伝いという課題をクリアするためには、上半身にネットワーク通信部だったり、特別な腕の機構を追加する必要があり、4kgをこえることが予想されて、それをクリアするには現時点では「4014を連結させるデュアルサーボ化」しかないと思われます。他社ではヴィストンのスーパーハイトルクという選定がありますがサーボ1個でパソコンが買えるような価格です。”商売ではない個人活動”では投資リスクが大きすぎます。
他の参加者でロボットフォースさんのファイブはイベントで活躍していますし、店長さんのくまたろうもお店の看板ロボットに成長させることもできるでしょうけど。
やはり大型機体をつくるためのホビーロボット向けサーボモータ自体が現在”過渡期”にあって、いま脚をすべてデュアルサーボ化して倍のサーボモータを購入する決断はできませんでした。
それでも開発したソフトウェアとアイデアを搭載したかったので、ギリギリのハードウェアとして4kg前後の「作業用オートモ」をつくったわけです。

予選から本戦までの3週間で、固い床面に転倒したときの腕部への衝撃を考慮したサーボの変更、背骨のアーム部のパワーアップ、腰のバケット部や音声ユニットの追加により、4kgを超えてしまったのでレギュレーションの都合上、脚を30mm伸ばしています。
本戦競技ではじめて5分以上の運用をしたのですが、熱ダレで歩行がままならない状態になったのが残念でした。なんとかかんとかゴールできましたけど。

背骨のアームを考えた時点で、背骨をそらして腰に荷物をかかえて歩くことを考えていて、人間も重いものを運ぶときは自分の重心に近いところに持ってきたほうが楽に運べるので。腰にバケットを設けて、アームのパワーで挟み込むことにしました。ちょうど4014サーボが6個は入るサイズです。これは作業用オートモならではのアクションで、下が検討中に描いたラフスケッチ。

今回こだわったのはやはり操作系です。
作業用オートモはプレイステーションのコントローラでほとんどの操作ができるようにしています。理由は「生まれたときからゲームが身近にあった世代の子たちはプレイステーションの運転免許証を持っていて日常的に操作訓練をしているようなもの」だから。マスタースレーブのように細かいアクションをするのに優れた技術はあるのですが、やはり訓練がいる器具をいきなり扱えない(急に寝たきりになった人に、マスタースレーブが便利だから使えるようになれ、というのも酷な話ですので)。人間がロボットにあわせるのでなく、人間の意志をロボットが理解してくれるのが理想です。また本戦では店員との会話が必要で、数十種類の音声を伴うアクションを行わなければいけません。それをプレイステーションのコントローラに割り付けるにはキーが足りないし、覚えられません。そこで「イラストを描いたカードまたは物体にICチップを貼り付けたもの」をリーダーライターにかざすことで発話+アクションするようにしました(音声認識も実験済みなのですが、今回は雑音の問題などもあり不採用)。

きれいなデザインやっている時間がなく、前日、手描きでサッと描くことになったので出来は”いまさん”ぐらいです。
たとえばICチップを貼った1000円(実際はおもちゃの紙幣、1000のびポイント)をプレステコントローラ横のリーダかざすと、作業用オートモが「1000円で支払います」の声とともに、千円をもった右手を店員に差し出すようにしました。極力、操作負担のすくないユーザーインターフェースをと考えてみました。

第一回目ということで非常に手探りの状態でしたが、新しいことに挑戦するのは苦しいながらも楽しかったです。

ROBO-ONE常連の方も「困難なミッションで第一回ROBO-ONEを思い出す。最近のROBO-ONEでこんなに苦労したことはなかった」と言っていました。私はROBO-ONEは11thからの参加で先人の足跡をたどってラジコンをはじめるようにすんなりと入れた世代ですが、今回の競技用に私たちが開発したものが次の誰かの足跡になるといいかもしれませんね。

少なくとも今回開発したオリジナルソフトウェアは、ハードウェアの大型・小型・二足歩行・クルマ問わずに適用できるので育てていこうと思います。